二日目の交渉、聖徳寺の本堂に場所を移します。

20100921_1169660艦長・楠之助 「いかがであるか。貴艦としては見舞金一千両を受け取って交渉を終えるが最善の策と存ずるが。」
岩崎弥太郎  「お、お待ちくだされ!」
艦長・楠之助 「・・・お主は?」
弥太郎    「拙者、土佐藩、土佐商会会計主任、岩崎弥太郎と申すものにて候。」
艦長・楠之助 「その会計屋さんが、何用でござるか。」
弥太郎    「そちら9人、こちらは8人と聞き、不公平でござるので、助っ人にまかりこした。」
艦長・楠之助 「ほぅーしかしもう交渉は終えるところだ」
弥太郎    「その前に、確認したい事があり申す。」
艦長・楠之助 「何だ!」
弥太郎    「此処に、そちらから出された航海日誌がある、この中でいろは丸が沈没する時、全員を助けたと書いてあるが間違いござらぬかぬ」
艦長・楠之助 「それは助けるのが人の道、そちらが悪いからと言って、見捨ててはいかぬ、武士の情けである。」
弥太郎    「かたじけない!ところで41名を助けたとあるが相違ござらぬか!」
艦長・楠之助 「間違いないが、それがどうした。」
弥太郎    「一度紀州藩に勤めたことがある伝助が顔見知りだったので、始めに伝助を乗艦許可し助けたとある」「伝助は一番初めに縄梯子を上ってきたとある。」
艦長・楠之助 「そうだ!うちの当直士官が乗艦許可した、そのようなことどうでもよいではないか、こちらの航海日誌は間違っているはずかなかろう。」
弥太郎    「こちらの船員総勢34名!伝助は足を怪我しており縄梯子は上れず、仲間が負ぶってそちらの船に移ったもの、この事どうか説明してくだされー!」
艦長・楠之助 「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
弥太郎    「夜中の航行にもかかわらず、当直士官がいなかったのでは?」
艦長・楠之助 「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
弥太郎    「先日のお集まりの折、いろは丸のマストランプに投光されていないとのこと、当直士官がいないとのことであれば・・・・・・・・・・」
艦長・楠之助 「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

艦長・高柳楠之助も絶句し、完全に形勢逆転です。
こうして紀州藩から七万両の賠償金を貰うこととなり、竜馬は弥太郎を共同経営者と同じ扱いで海援隊に入れます。
龍馬の暗殺は、この事を恨みに思った紀州藩士の反抗という説は今でも有力です。
弥太郎が龍馬の死を知ると同じ頃に紀州藩から7万両が届きます。
弥太郎は目の前に積まれた七万両の千両箱を前に「坂本さん、わしゃこれ、どうしたらええですか」と立ち尽くしたそうです。

この七万両のうち四万両が土佐商会の預かりとなり、その運用資金をもって独立した岩崎弥太郎は、九十九商会、三川商会、そして「三菱商会」を立ち上げ、最近色々問題の多い三菱の元となったのです。

いろは丸事件を語った弥太郎の生家で掃除していた老人の話はこれで終った。


いろは丸が沈まなかったら、三菱はなかったかもね!


又、明日!